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2026年スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・東京

国内最大規模の舞台が24年ぶりに東京で。アスリートもパートナーも躍動!

 知的障害のある人たちを対象にしたスポーツの全国大会、「2026年第9回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・東京」が2026年6月5日から7日の3日間にわたって東京都内で開催された。東京開催は24年ぶり2回目で、全国46地区からアスリートら1,115名が参加し、全7競技(バスケットボール[ユニファイドスポーツ®(※1)]、テニス、バドミントン、陸上競技、サッカー、フライングディスク、卓球)で熱戦が展開された。なお、今大会は2期間に分散開催され、2期目は9月4日から6日に全3競技(バスケットボール[トラディショナル(※2)]、競泳、ボウリング)が実施予定となっている。

(※1)知的障害のあるアスリートと、障害のないパートナーが混合でチームを組む

(※2)知的障害のあるアスリートのみでチームやペアを組む

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 スペシャルオリンピックス(以下、SO)はアメリカで創設された国際的なスポーツ組織で、知的障害のある人たちに年間を通してスポーツトレーニングと、その成果の発表の場である競技会を提供し、社会参加を応援している。SOは4年に1度、夏季・冬季の世界大会も開催している。

 今大会のナショナルゲームを主催するのはSOの国内組織である「スペシャルオリンピックス日本(以下、SON)」で、夏季大会と冬季大会をそれぞれ4年に1度、開催している。今大会は来年2027年にチリ・サンティアゴで開催される夏季世界大会の日本選手団選考会も兼ねている。

■笑顔があふれた開会式


選手団と一緒になり、開会式を盛り上げた有森裕子さん

MISIAさんによるスペシャルライブでは会場が一体となり大きな盛り上がりを見せた

 大会初日の6月5日には東京・江東区のトヨタアリーナ東京にて高円宮妃久子殿下ご臨席のもと、開会式が行われた。大会実行委員長でSONの平岡拓晃(ひらおかひろあき)理事長は選手たちに、「自分が持っている以上の力を出して頑張りましょう。何より、たくさんの友だちをつくって、最高の東京大会にしましょう」と呼びかけ、開会を宣言した。アスリートを代表し、SON東京から陸上競技の伊勢谷胡粋(いせやこいき)選手とバスケットボール(ユニファイドスポーツ)でパートナーのロージアシャン選手が「私たちは精一杯力を出して勝利をめざします」と宣誓した。さらにSOの活動を10年以上も応援しているアーティストのMISIAさんが今大会公式応援ソング『太陽のパレード』を含む全5曲のスペシャルライブを披露するなど多彩なゲストが開会式を彩り、選手たちにエールを送った。

 開会式後、平岡理事長は「東京ではオリンピック、パラリンピック、昨年にはデフリンピックが行われ、レガシーが積み重なってきた。このナショナルゲームも新たなレガシーを積み重ねられたら」と今大会開催への思いを語り、「レガシーとは違いを認め合いながら挑戦し、社会を見直していこうという我々の活動。東京から全国に広げていきたい」と期待を寄せた。

 SON前理事長で、ユニファイドスポーツアンバサダーの有森裕子(ありもりゆうこ)さんは、「私たちの根本的なテーマはスポーツを通した共生社会の実現です。SOは特別なものでなく、スポーツイベントとして当たり前に注目してほしい」と願った。

■それぞれの目標に挑んだアスリートたち

 競技は6日、7日にわたって行われ、各会場ではそれぞれの目標達成を目指し、選手たちが躍動した。SOの競技会では順位のみを重視せず、各選手が自分の能力を十分に発揮できるようにと考えられた「ディビジョニング」制が特徴だ。選手を性別や年齢、競技能力などによってクラス(ディビジョン)に分け、できるだけ同程度のレベル同士が対戦できるようにした工夫だ。一般的な予選の代わりにディビジョニングを行った上で、全員が決勝に進み全員が表彰される。


SOでは競技において参加者が全力で競い合う、マキシマムエフォートルールを採用している

最後まで競技をやり通した選手を称え全員を表彰するのもSOの特徴の一つ。思い思いのポーズで記念撮影

 実際、順位や勝敗よりも自身の立てた目標に向かって真摯に挑む選手たちの姿が印象的だった。例えば、陸上競技の男子5000mディビジョン3を制した田中景一郎(たなかけいいちろう)選手(SON神奈川)。レース終盤まで全体2番手につけていたが、残り1周から鮮やかなスパートで先頭に立ち、16分47秒96で優勝。「楽しかったです。3~4kmまでは抜きつ抜かれつで楽しく走っていこうと考えていました。でも、がんばってラストをあげてみました」と充実の表情で会心のレースを振り返った。


ラストスパートをかける田中景一郎選手(右)

 普段から多数の動画でレースを研究している田中選手。「5000mの速い選手はラスト1周で60秒を切ることが多い」と分かり、この日、自身も挑んでみたという。今後の目標を聞くと、現在取り組んでいる800mから5000mまで4種目の目標タイムを詳細に挙げ、「3年後くらいまでに、全部達成することが今の夢です」と力強く話してくれた。


正確に輪にディスクを通し続けた林美行選手

 フライングディスク競技で5m先の輪にディスクを通すアキュラシー種目のディビジョン4決勝で、10投中9投を成功させて2位となった林美行(はやしみゆき)選手(SON大阪)。前日のディビジョニングでも9投成功の好結果だったが、その試合後に感想を聞くと、「許せない。10回じゃなかったから」と悔しそうな表情。競技歴は20年以上になるが、向上心はいつも高く、練習にも日々、熱心に取り組んでいるという。

■ともに分かち合い、楽しみ合う喜び

 「ユニファイドスポーツ」もSOの取り組みの大きな一つだ。知的障害のある人(アスリート)と知的障害のない人(パートナー)とが混合チームを作って練習や試合を行い、スポーツを通じて互いの個性を理解し、支え合う関係を築いていこうというものだ。SO国際本部が推進し、世界中で展開されている。

 サッカーもその一つで、ユニファイドスポーツ7人制サッカーではディビジョン1に6チームが参加し、SON福島が頂点に立った。決勝戦で前回覇者のSON長野を1-0で退け、予選ラウンドから6戦全勝、失点ゼロという完勝だった。


アスリートの室井綾太選手(左)とパートナーの大内翔太選手(右)

身体を寄せて相手をブロックし、堅い守備をみせたSON福島

 サッカー歴10年以上のアスリートで福島のエース、室井綾太(むろいりょうた)選手はナショナルゲーム初出場。「SOは障害のある人でもこうやって輝いたり、メインで戦える舞台で、パートナーの方と一緒に取り組んで世界の頂点を目指せる唯一の場所。すごくいいなと思っています」と目を輝かせた。チームメイトの大内翔太(おおうちしょうた)選手はパートナーとしてSOに参加して約8年。今大会は予選で3得点したが、うち2点をアシストしたのはアスリートだったという。「この競技(ユニファイドスポーツ)はアスリートとパートナーが力を合わせるスポーツ。その醍醐味が経験できてよかった」と白い歯をこぼした。

 福島チームの笹山清美(ささやまきよみ)ヘッドコーチ(以下、HC)は、「(地元の)社会人チームが手伝ってくださり、週1ペースで練習試合を重ねてきました。知的障害の人たちのことを知ってもらう良い機会にもなり、(SOの)認知度も上げられたのでは」という手応えも口にした。


ナイスプレーにコート上で喜び合うアスリートの吉田樹選手(左)とパートナーの大谷貫太朗選手(右)

果敢にシュートを狙うアスリートの大谷荘太朗選手(中央)

 バスケットボール(ユニファイドスポーツ)はトヨタアリーナ東京で、5人制と3x3が行われ、5人制のディビジョン1はSON東京のチャレンジャーズ5AがSON愛知のSOドルフィンズに35-24で勝ち、優勝した。

 内藤明子(ないとうあきこ)HCは、「試合の立ち上がりが苦手なチームですが、今日はうまくいきました」と勝因を挙げた。選手選考を経て、昨年末頃からチーム練習を重ねてきた。地元、東京開催の大舞台に向け、「最後の合言葉は『みんなで最高に楽しい時間を迎えよう』でした」。決勝戦後、選手たちから、「このチーム、楽しいよ」「まだ、やめたくない」といった声が聞かれ、内藤HCは「最高でした」と目を細めた。

 アスリートの吉田樹(よしだいつき)選手は、「みんな持っているものが違うので、分かち合いながらやることが一番大事。こんな大きな会場での試合は初めてで緊張したけど、みんなと楽しくできて、勝てて良かったです」と笑顔を見せた。場内には「トウキョウコール」も響いた。大谷荘太朗(おおたにそうたろう)選手は「声は聞こえていたけど、集中していたので観客のほうを見ることはできなかった。でも、楽しかったです」とニコリとした。大谷選手の弟で、パートナーの大谷貫太朗(おおたにかんたろう)選手は、「ユニファイドチームとして一致団結し、みんながやるべきことをできたことが勝因」と振り返り、「兄と久しぶりにプレーできて嬉しかったし、貴重な体験でした」と笑みをこぼした。

 6月大会はのべ2,251人のボランティアにも支えられ、盛り上がりを見せて閉幕した。

(取材・文/星野恭子、撮影/有限会社エックスワン)